ヤモリの飼育から考えたこと
ヤモリなら飼えるかもしれない
わが家のマンションは、ペット禁止である。
しかし、小学生の次男くんは、以前からずっとペットを飼いたがっていた。
犬や猫はもちろん無理である。ハムスターや鳥も、マンションの規約を考えると微妙。
そんななかで、次男くんが思いついたのがヤモリであった。
ある日、自分で捕まえてきたヤモリを「飼いたい」と言い出した。
家の周りにもいる小さな生き物で、鳴き声もほとんどなく、散歩も必要ない。
これなら飼えるかもしれない。
妻もしぶしぶ了承し、わが家でのヤモリ飼育が始まった。
二度の失敗
ただ、その飼育には二度失敗している。
生き物の命に関わることなので、簡単に「失敗」と片づけるのは少し抵抗がある。それでも、その二度の経験を通して、子どもの考え方や行動が変わっていくのを見てきた。
最初のヤモリは、捕まえてきたときから、一度も餌を食べなかったと思う。
当時の次男くんは、ヤモリが気になって仕方がなかった。
何度もケースをのぞき、頻繁に触る。友達にも見せたかったのだろう。学校にまで持っていっていた。
本人としては、かわいがっているつもりだったのだと思う。
しかし、しばらくしてヤモリは死んでしまった。
その後、ヤモリについて調べるなかで、強いストレスを感じると餌を食べなくなることがあると知った。
捕まえられて環境が変わったうえに、何度も触られ、学校にまで連れていかれた。
本当の原因は分からない。ただ、餌を食べなかったのはストレスのためだったのではないか。今ではそう考えている。
二度目の飼育では、一度目の反省があった。
今度は必要以上に触らない。ケースを何度も動かさない。観察も最低限にとどめる。
前回とは明らかに接し方が変わっていた。
ヤモリは餌も食べ、しばらくは元気に活動していた。
今度は大丈夫そうだと、次男くんも私も思っていた。
ところが、少しずつ元気がなくなり、最後にはうまく動けないようになってしまった。
症状から考えると、クル病に近い状態だったのではないかと推測している。
爬虫類のクル病とは、カルシウムやビタミンDなどが不足し、骨が弱くなる病気である。歩きにくくなったり、自分の体をうまく支えられなくなったりすることがある。
当時は、主食として近くの店舗で購入可能なコオロギとミルワームを与えていた。
ヤモリもよく食べていたので、それで問題ないと思っていた。しかし、その2種に偏った食事では栄養のバランスが悪く、カルシウムが不足していたのかもしれない。
一度目は、構いすぎたこと。
二度目は、餌や栄養についての知識が足りなかったこと。
一度目の経験から接し方は変えられたが、それだけでは十分ではなかった。
飼育は、ケースに入れて餌を与えればよいというものではない。
生き物の性質を知り、適切な距離を取り、温度や湿度、餌の種類、栄養のバランスまで考える必要がある。
二度の経験を経て、次男くんも私も、飼う前に知っておくべきことがたくさんあるのだと気づいた。
ヤモリからレオパへ
ヤモリの飼育方法を調べるなかで、次男くんはレオパードゲッコーという生き物を知った。
通称、レオパである。
ペットとして飼育されることの多いヤモリの仲間で、体の色や模様にもさまざまな種類がある。
そのうち、次男くんはレオパに強い憧れを持つようになった。
ただ、レオパはその辺で捕まえてくることはできない。
生体だけでなく、専用のケージや保温器具なども必要である。
そこで次男くんが使ったのが、Nintendo Switch 2を買うために貯めていたお金だった。
ゲーム機のために貯めていたお金で、レオパと専用のケージを買う。
その選択には、少し驚いた。
Switch 2も欲しかったはずである。それでも、自分で世話を続ける生き物のほうを選んだ。
レオパを迎えるときには、ペットショップの店員から飼育方法をしっかり教えてもらった。
どのような餌を与えるのか。
一度にどれくらい与えるのか。
何日おきに与えるのか。
カルシウムやビタミンをどう補うのか。
ケージの中を何度に保つのか。
暖かい場所と涼しい場所をどう作るのか。
今回は、自分たちの知識だけで何となく飼い始めるのではなく、分からないことを確認し、必要な環境を整えてから飼育を始めた。
もちろん、レオパとケージを買えば、それで終わりというわけではない。
餌となるコオロギやミルワーム、床材、保温器具、カルシウムやビタミンなど、飼育を続けるためには細かな出費が積み重なる。
小学生のお小遣いだけですべてをまかなうのは難しいため、その多くは私の小遣いから出ている。
子どもが失敗から学び、成長しているのは喜ばしい。
ただし、その成長に比例して、父親の小遣いは順調に減っている。
飼い主らしくなってきた
現在も、次男くんは、毎日水を替え、フンを見つけたら掃除をしている。
餌を食べたか、元気に動いているかも観察している。
(合わせて、生き餌のコオロギの世話も毎日している。)
以前は、捕まえてきたヤモリを触ったり、友達に見せたりすることが飼育の中心だった。
今では、触りたい気持ちを抑えながら、生き物が健康に暮らすためには何が必要なのかを考えるようになった。
最近では、レオパに与えるコオロギを自分で繁殖させようとまでしている。
レオパを育てるだけでも大変なのに、今度はその餌まで育てようとしている。
飼い主として、ずいぶん成長したものだと思う。
同時に、コオロギの繁殖ケースや餌など、さらに私の小遣いが必要になる未来も見えている。
子どもの探究心には、なかなか終わりがない。
そんな姿を見ながら、失敗を糧にして成長しているのだと感じた。
失敗したから調べる。
調べたから、それまで見えていなかったことに気づく。
気づいたから、次の行動を変える。
成長とは、こういうことなのかもしれない。
考えたこと
ふと自分のことも考えた。
自分は最近、どのような失敗をしただろうか。
失敗がまったくないとは思わないが、致命的なものがあったとも思えない。
もちろん、手を抜いた結果として起きる失敗はよくないし、あえて大きな失敗をする必要もない。
ただ、最近まったく失敗していないのだとしたら、自分は今も何かを試しているだろうか。
ときどき、そう振り返ってみてもよいのかもしれない。
子どもの挑戦が続くかぎり、父親の小遣いはまだまだ減りそうである。
その様子を見ながら、私も負けない程度には、何かを試していきたいと思う。