山を走るまでの8ヶ月のこと TIME<LIFE
赤城の森 トレイルランニング大会2026に参加した。
山の中を20キロ走る。
それは控えめに言っても、なかなか悪くない体験だった。
参加者は大会公式発表で650人を超えていて、僕は総合で129位、年代別では32位だった。
ギリギリ上位20%に入れた。
完璧な結果とは言えないまでも、まあ、悪くない数字だ。
とにかく楽しかったし、いくつかの個人的な課題も見つかった。
そういう意味では、とても真っ当で実りある大会だったと言える。
はじまりは何か
私が真面目に走り始めたのは今年に入ってからのことだ。
45歳という年齢を迎えるにあたり、僕は自分の「LIFE(生活)」というものを、もう少しだけ確かな手触りのあるものにしたいと漠然と考えていた。
そこで年始、仕事始めで今年の抱負を語る際に
「今年は1000キロ走る」
と全社に向けて宣言してみた。
一度口に出してしまった以上はやりきる。
自分を動かすためには”宣言”が一番効果的だ。
目標は何か
目標は3つあった。
①体脂肪率を13%台にすること
②年間1000キロ走ること
③ハーフマラソンで2時間を切ること
なぜ13%なのか?
そこに深い哲学的な理由はない。
単なる数字の決め事に過ぎない。
なんとなくそれが良かったからだ。
しかし、長く走り続けるためには正月太りで18.8%もあったカラダから、不要な重りを静かに取り除かなくてはならない。
つまり、体重の6%近い重りを外す必要があった。
最初は1日に2~3キロのささやかなランニングから始まった。
正直2キロも走れば、「今日は走ったぞ」という達成感を得られるには十分過ぎる疲労を感じていた。
はっきり言って、息はめちゃくちゃ上がるし、脚も痛くなる。
しかしそれでも続けてみた。
今まで走ってこなかった。
息が上がるのも、脚が痛いのも全てその報いだ。
圧倒的に自責の念に駆られていた。
しかし、続けていくと不思議なことに徐々に2キロでは自身の満足感が足りなくなってきた。
やがてそれは10キロになった。
時には、私が「師匠」と心の中で仰ぎ100マイラーと呼ばれるストイックな師匠に連れられて高尾山で修行も行った。
師匠との修行は本当に辛かった。
師にとっては日常のルーティンでも、私にとっては全身の回復までに2週間を要するほど激しいダメージを負うような修行なのだ。
初めて「膝が笑う」という感覚を味わった。
家族旅行では、早朝に起床して静かな湖畔や山を走り、そして森で熊に遭遇したりもした。
熊は僕を見て、僕も熊を見た。
それだけのことだ。
それだけのことだけど命の危機は確かに感じた。
(山には気を付けよう)
週に8回という、よく考えると計算の合わない回数で飲んでいた酒を週に1~2回に減らした。
飲むのは会食の時だけだ。
朝はヨーグルトとナッツを。
昼は蕎麦、ゆで卵、サラダを。
夜は肉を焼いて多めのタンパク質を摂った。
もともとエクトモルフ型という、筋肉も脂肪もつきにくく、且つエネルギー消費時には筋肉から削り始める体質である為、筋肉を落とさないための筋トレも、生活の静かなルーティンに組み込んだ。
結果、体脂肪率はどうなったか
7月11日
私の体脂肪率は
9.9%
にまで落ちていた。
体重にして8キロの減少。
2リットルのペットボトル4本分の質量が私のカラダから取り除かれた。
しかし、ここでAIのトレーナーから警告を受けることになる。
「あなたの身体は今、ひどく燃費の悪いスポーツカーのような状態になっている」
「このままでは危険」
だと彼は言った。
脂肪を失いすぎた身体は生命の危機を感じ、ガソリンの代わりに大切な筋肉から先に燃やし始めているというのだ。
そういうわけで、私は大会までのひと月半、目標の数値までわざわざ体重を「戻す」という奇妙な作業に取り組むことになった。
つまり食事の回数を増やすことにした。
1日4食だ。
ここに間食も加えた。
結果、ハーフ2時間切り目標はどうだったか
8月23日
大会当日。
山の中の20キロを1時間52分48秒で駆け抜けた。
有識者曰くアップダウンのある山の20キロは舗装路の24キロに相当するらしい。
つまるところハーフマラソンの2時間切りという目標は、思いがけない形で大きくクリアされてしまった。
8月末の時点で、走行距離はすでに880キロに達している。
年間1000キロの目標も怪我さえなければクリアできるだろう。
TIME<LIFE
学生時代を含めても、これほど自分の肉体と真摯に向き合った時間はなかったかもしれない。
お酒の量は減り、規則正しい運動が生活の一部になり、新しい人々との穏やかな繋がりも生まれた。
私が求めているのは、ストップウォッチが刻む無機質なタイム(TIME)ではなく、自分の生活、つまりライフ(LIFE)の質を深めることだ。
これからも
「TIME < LIFE」
という静かな原則を胸に抱いたまま、自分の手の届く少し先の風景を目指して、走り続けるのだろう。
あとがき
原稿を作成したのちに、
太宰治
東野圭吾
村上春樹
伊坂幸太郎
三島由紀夫
上記いずれかの方の文体の特徴に変換しました。
是非、当ててみてください。